第103回 エッセンシャル・ワーク(キー・ワーク)としての協同労働

<開催にあたり(この研究会は終了いたしました)>

コロナ禍で地域で必要とされている仕事が顕在化したように感じます。具体的には、医療・介護・食・物流・生活困窮・就労窓口などの相談支援・子育て(保育園・学童クラブ)等です。

このようなキーワーカーとして奮闘しているのが労働者協同組合です。今回は労働者協同組合の実践を共有した上で、コロナ禍・ポストコロナ社会を展望するタネを協同・連帯の視点から探究します。

<開催趣旨>

・コロナ禍でキーワーカーである労働者協同組合の実践共有

・現局面を共有した上で、コロナ禍・ポストコロナ社会、社会的連帯経済を推進するために、どのような問い、視点を持つことが必要なのか。

・それぞれの問いについて、それぞれがどのような行動を起こしていくのか。

<当日の動画(無料公開中)>

第103回 社会的企業研究会(無料公開中)

<感想・コメント:田中夏子(農園「風と土」)>

コロナ禍のもとでの協同労働の実態報告から、あらためて協同労働の優位性とその課題が浮き彫りになる議論が提起され、大変刺激的な研究会でした。

第一のACTのご報告は、感染防止をはかりながら利用者の生活の質を維持するケアのあり方を、ケア者が試行錯誤する中で利用者とともに築いていった経過が示され、胸に迫るものがありました。行政からの無理難題に翻弄されながら、心身のリスクに耐え、なおかつ経営的な厳しさも加わる中での運営…「共に働く」の理念と実践の積み上げ無しには到底乗り越えられなかったと受け止めました。

第二の生協の配送委託を担うW.Coのご報告では、三月以降、軒並み増加した利用量への対応で、仕事の負荷の増大と感染対策の心労等、激務が続く中、これを「協同労働で働く仲間関係があるからこそ乗り越えられた」と振り返り、生産者と組合員双方の思いを繋ぐ結節点に立つ使命感の大きさも提起されていました。

第三の、全国のワーカーズコープの実践を取りまとめた協同総研からの報告では、就労支援の現場から非正規、派遣、そして外国人労働者を失業問題が直撃する現状が示され、今後、これに備えた就労支援と仕事の創出が課題であること、まさに協同労働ならでは社会的意義とこれからやるべきことの提起がなされました。

いずれの現場も、自らの心身をすり減らすギリギリの状況で、これまで経験したことのない判断と対応を迫られ、厳しい議論と試行を経ながらも歩みを止めなかったことがうかがえます。歩みが止まらない、止められないのはこれらの事業が、暮らしと命を支える必要不可欠のワークであるからにほかなりません。

今回の経験で、協同労働をめぐる様々な実践知が蓄積されました。本研究会のように、その意味付けと課題が共有されることは極めて重要と考えます。同時に、気候危機や生態系攪乱が常態化することと感染症の拡大は軌を一にしていることが多くの論者によって指摘されていますが、これが常態化するとなれば、とても協同労働の優位性だけで乗り切れるものでないことも明らかです。協同労働で働く人々のディーセントワークが達成されなければ社会の暮らしといのちを守ることもできなくなる…全国的なネットワークで、事業と働き方を互いに守りあうとともに、社会全体の富の蓄積構造を変える一層の努力の必要も痛感しました。

日時:2020年8月4日(火曜日)18時~20時30分

場所:ZOOM会議

報告テーマ:

「コロナ禍の労働者協同組合の実践からポストコロナ社会を考える」

報告者:

第1報告  「コロナ禍における高齢者・障がい者支援事業」

浅井 久美子さん(ACTたすけあいワーカーズ・コレクティブ連合代表)

第2報告 「組合員の生活維持を自分事として~ライフラインを維持する仕事~」

風間 由加さん(WNJ受託事業会議座長)

第3報告  「コロナ禍のワーカーズコープの実践から、大失業時代へどう立ち向かうのか」

相良 孝雄さん(一般社団法人協同総合研究所事務局長/理事)

質疑・討論【コーディネーター 藤井恵里さん】

・コロナ禍から何を問うのか

・コロナ禍で何を為すのか