第9回総会(第102回) ポストコロナ時代の社会的経済とベーシック・インカム

社会的連帯経済推進フォーラム News

ご案内(この研究会は終了いたしました):

2005年に結成して以来、社会的企業研究会では、主として欧州や韓国の社会的企業・社会的連帯経済に関わる実践者や研究者との国際交流を行う中で、社会的企業や社会的連帯経済といったコンセプトの持つ学術的意味や実践としての可能性を検討してきました。101回目以降の社会的企業研究会では、現場の社会的企業の実践を一方では重視しながら、他方では新たな社会を構想していくための一つの道標、すなわち社会的連帯経済の可能性を皆さんと共に追求していきたいと思います。また、新型コロナウィルスがどのように社会的連帯経済の実践や議論に影響を及ぼしつつあるのかも含めて、各国の先端的動向を明らかにしていきたいと思います。その新たな議論のきっかけを得るために、隣国である韓国の事例から学ぼうと本研究会を企画しました。

韓国では、IMFショック以降、社会経済のあり方が見直され、2007年に社会的企業育成法、2012年の協同組合基本法が制定されたことにより、協同組合や社会的企業の役割を政策上はっきりと位置づけてきました。さらに、2011年に朴元淳氏がソウル市長に就任し、2017年に「共に民主党」の大統領としてムン・ジェイン氏が大統領に就任した後は、「市民主導」の政策が次々に打ち出され、市民の提案が政策に反映される仕組みづくりがされてきました。

現在世界的にポストコロナに向けての議論も始まっていますが、韓国でも、ポストコロナ時代における環境、経済、社会保障政策などがホットイシューとなっています。今回の研究会では、4月の国政選挙で、30~40代の若者を中心に据え、革新政策を訴えて躍動したミニ政党「時代転換」を創設し、86世代(80年代に民主化に関わった1960年代生まれ)中心の国会に一石を投じたイ・ウォンジェ氏をお招きして発表をお願いします。イ・ウォンジェ氏は、ハンギョレ経済研究所所長、希望製作所所長を歴任しながら、社会的経済についても積極的に政策提言を行ってきました。今回、LABO2050の代表として、第4次産業革命時代における経済、労働、社会保障のあり方について、これまでに提言している内容に触れながら、ポストコロナ以降の韓国社会が進もうとする方向性、社会的経済の役割についてもお話いただきます。また、政治プラットフォームNow-Reの代表キム・ボラン氏にもコメントをいただき、韓国の市民社会・政治に明るいパネリストとともに議論を深めていきます。

※なお、この公開シンポジウムは、科学研究費(基盤B)「社会的連帯経済の「連帯」を紡ぎ出すものは何か―コミュニティ開発の国際比較研究―」(科研番号:18H00935  代表者:藤井敦史)による調査研究活動の一部として実施されるものである。

<当日の動画(無料公開中)>

第102回 社会的企業研究会(無料公開中)

感想・コメント(東海大学 竹内 友章さん)

第102回社会的企業研究会の概要

4月の国政選挙で、80年代の韓国民主化運動に関わった86世代中心の国会運営からの改革を模索し、革新政策を訴えて30~40代の若者を中心の政党「時代転換」を率いた、イ・ウォンジェ氏から「コロナ0年超回復の始まり」と題し話題提供をいただいた。

イ・ウォンジェ氏は、ハンギョレ経済研究所所長、希望製作所所長を歴任しながら、社会的経済についても積極的に政策提言を行ってきた。現在は、著名なベンチャー企業家の支援を得て、政策シンクタンク『LAB2050』を設立し代表となっている。第4次産業革命時代における経済、労働、社会保障のあり方について、これまでに提言している内容に触れながら、ポストコロナ以降の韓国社会が進もうとする方向性、社会的経済の役割についてまで幅広い話題提供をいただいた。

後半では、政治プラットフォームNow-Reの代表キム・ボラン氏、『ソウルの市民民主主義』等の著書がある白石孝氏、NPO法人希望の種の副理事長桔川純子氏の韓国の市民社会・政治に精通する専門家らと議論を深めた。コーディネーターは明治大学柳沢敏勝氏がつとめた。

6つの危機の経験と、それを乗り越える処方箋

イ・ウォンジェ氏は新型コロナ感染症が与える世界・韓国社会への影響を6つの視点から指摘した。

本報告のタイトルにある「超回復」は、世界が共通する危機の経験と、そこから脱出のための処方箋と考えることができる。

1つ目は、自由貿易から保護主義への転換である。自国の利益優先の社会がより進行するという指摘である。2つ目は、世界各国の経済のマイナス成長である。韓国ではオイルショック以降、最も低い経済成長率が予測されている。アメリカも第二次世界大戦後、最も低い成長率との指摘がある。3つ目は、IT産業に象徴されるようなプラットフォームビジネスの拡大による独占市場化と公正な競争秩序の崩壊である。4つ目は、非正規雇用の拡大による安定した雇用の職場の減少、5つ目は、それらに伴う公務員志望の若者の増加と競争激化、また不労所得を得るための資産家志向など社会に格差を生み出す構造への動員。6つ目は、経済活動が停止しているのにもかかわらず、二酸化炭素の排出が削減できていないことから推察される環境問題の解決策の手立てのなさの露呈である。

そしてこれらの6つの危機の指摘に共通するのは、新型コロナ感染症によってもたらされたのではなく、予測されていた危機の訪れが早まったと言う理解である。技術革新による雇用不安が根本的に高まり、社会問題が構造的に発生しやすくなった社会で、感染症の大流行や気候変動がそれらの危機の到来を早め、また大きくしたと言う指摘である。それらの危機に対しては、政府が直接、解決するために乗り出す「大きな政府」の再登板のへの期待が高まる時代を予測する。

しかし、経済の回復と成長を前提とする「大きな政府」であるとすれば、6つの危機を背景として財務的価値が強化されるという危惧を合わせて指摘する。

そこで、イ・ウォンジェ氏が提案するのが、3つの政策である。1つ目が、社会的経済という発想による社会的価値の転換、すなわちGDPと経済成長という国家の指標からの離脱である。2つ目が、ベーシックインカム導入による個人の自由と権利を拡張する福祉国家への転換、③個々人が拡張した権利の認識や、積極的な倫理的消費、社会的消費につながる学習による民主主義の展開である。

従来の福祉国家的発想の公共事業中心の政策の市場介入は社会の硬直性が高まり、自由と革新に取り組もうという動機の萎縮につながる。それに対して、社会的経済という発想の導入は民間の柔軟性と革新を社会的価値の創造として取り組む政策として理解することができた。

若干の感想

イ・ウォンジェ氏が最後に指摘した「ベーシックインカムと社会的経済が共存し、働きながら遊び、学ぶ暮らし」にある、ベーシックインカムと社会的経済の共存が重要であると感じた。日本では、リーマンショック後、民主党政権が「負の所得税」である給付付き税額控除制度をマニフェストに掲げたことでベーシックインカムが注目された。一方で、ベーシックインカムの導入には、労働条件の劣化、コミュニティへの参加圧力の高まりなどの検討すべき課題も多く指摘される。それ故に、イ・ウォンジェ氏が指摘する「社会的経済との共存」が重要になってくるのではないかと考えた。

韓国では、協同組合基本法により、社会的経済への参加が多くの人にひらかれ、それらを支援する政策も整備されている。社会的経済がより多くの人に受け入れられる土壌が整備されている。イ・ウォンジェ氏の危機からの「超回復」の処方箋、とりわけベーシックインカムという社会福祉のあり方自体を大胆に変革することを試みると仕組みが韓国社会でどう受容されていくのか、また、その過程において社会的価値がいかに形成されていくのか今後もその動向を注目していきたいと思う。

【第九回総会と第102回社会的企業研究会のご案内】

社会的企業研究会は、2005年3月11日結成以来、15年にわたり、100回の研究会を積み重ねてきました。第九回総会を期により活動を展開してまいりたいと存じます。

つきましては、総会を下記のように開催しますので、会員の方は万障繰り合わせの上、是非、ご参加ください。なお、出欠につきましては、以下の「申し込みフォーム」から参加の手続きを行ってください。また、総会終了後に開催される研究会についても是非、ご参加ください。

申し込みフォーム(終了いたしました):

お探しのページが見つかりません。

※参加を希望される方は、上記URLにアクセスしていただき、参加の手続きを行ってください。7月30日(木曜日)の18時を締め切りとさせていただきます。

【総会】

日時:2020年7月31日(金曜日)16:30~17:30

場所:ZOOM会議(Web会議サービス)にて開催

【第102回社会的企業研究会(総会記念)】

日時:2020年7月31日(金曜日)18:00~21:00

場所:ZOOM会議(Web会議サービス)にて開催

※ZOOM会議のURLやID等は申し込みを頂いた後でご連絡させていただきます。

報告テーマ:

「ポストコロナ時代の韓国社会の行方と社会的経済の役割」

報告者:

イ ウォンジェ(Labo 2050・代表)

※当日通訳有り

【イ・ウォンジェさん当日発表資料はこちらから】

200731イ・ウォンジェさん発表PPT_JP_社会的企業研究会

パネラー:

柳沢 敏勝(明治大学商学部教授)

白石孝(日韓市民交流を進める希望連帯・代表/ PARC・理事)

桔川純子(明治大学等非常勤講師)

キム ボラン(Now-Re・代表)