労働者協同組合法制定を記念して研究会が開かれました。
2020年6月12日に全党・全会派の賛同の上で議員提案として衆議院に提出された。その後、臨時国会で衆議院厚生労働委員会、衆議院本会議、参議院厚生労働委員会の議を経て、2020年12月4日参議院本会議で可決され、11日の官報で公布され制定されることとなった。
労働者協同組合法制定記念・研究会
―法制定の意味・ポイントと法を活かすために―
(この研究会は終了いたしました)
【開催趣旨】
第108回社会的企業研究会では、労働者協同組合法を研究会テーマとして取り上げる。
2020年6月12日に全党・全会派の賛同の上で議員提案として衆議院に提出された。その後、臨時国会で衆議院厚生労働委員会、衆議院本会議、参議院厚生労働委員会の議を経て、2020年12月4日参議院本会議で可決され、11日の官報で公布され制定されることとなった。
労働者協同組合法制定にあたっては、940以上の市区町村議会で労働者協同組合法早期制定の意見書を決議いただいたことや与野党を超える国会議員の方々のご尽力によるものであるが、議員の方々を動かしたのは労働者協同組合として運営してきた当事者団体(ワーカーズコープ、ワーカーズ・コレクティブ)の実践の強さとしなやかさに触れることが大きかったと考えている。
そこで本研究会では、法制定運動を実践者の視点から関わった田嶋康利さん(日本労協連専務理事)と藤井恵里さん(ワーカーズ・コレクティブ ネットワークジャパン代表)にご登壇いただき、法制定の意味・ポイントと法を活かすための論点を共有した上で、今後の労働者協同組合運動、協同労働の可能性を交流することを目的に開催する。
【当日の動画(無料公開中)】
【コメント・感想】(随時、追加予定)
〇竹野政史さん(明治大学大学院政治経済学研究科・博士前期)
NPO法の成立以降、非営利組織という考え方が日本の社会で広く一般化したように、労協法が成立したことによって協同労働という働き方が一般化していく契機となっていくのではないかと思います。地域社会やコミュニティのなかで、労働者協同組合が地域社会のニーズに応える主体としての役割を協同労働というあり方を通じて担っていくことが期待されるのではないでしょうか。
またNPO法のときと同様に、まったく予想していなかったような新しい文脈から労働者協同組合が生まれるかもしれません。様々な立場の人が参加する協同労働とは何か、それをどう実体化するのか、どう説明するのかが問われているように感じられました。
〇田井勝さん(アーバンズ合同会社・代表社員)
藤井恵理さんのご報告は、ワーカーズコープ法の成立過程が特に興味深かった。協同組合的経営は、いわば労働者全員が使用者であり、そうなると、労働保険には入れないというロジックが当然でてくる。これは私が協同組合というものを知ったときに真っ先に出てきた疑問であったが、やはり論争がなされていたのかと腑に落ちた。結局、労働契約を結ぶことで決着がついたらしいが、そうなると「雇用されない働き方」という理念は果たされないというジレンマに陥っていていると伺い、労働者を守る労働基準法がこういう形で弊害にもなりうるのかと驚いた。きわめて政治的な問題なため難しく、門外漢には感想を述べることしかできないが、理念と現実をうまいことすり合わせていってほしいと願っている。一方で、田嶋康利さんのご報告は、実践的な内容が多かった。私自身、仕事のなかった地元の幼馴染と合同会社を起ち上げているので、協同組合という法人格には関心がある。しかしながら、NPO等から労働者協同組合への法人格の移行は可能でも、合同会社からの移行はできないようなので、大変落胆した。副業として起業をするような時代のなか、お金だけじゃない働き甲斐のある仕組みとしての協同組合は大変魅力的である。ワーカーズコープ法の施行までにはもう少し時間がかかるようなので、利用しやすい形になるよう応援していきたい。
藤井晴太郎さん(NPO法人わくわくかん)
ワーカーズコープの協同労働の多くの事例を知ることができ、法の可能性を感じました。今後の私共の事業展開をイメージするに当たり、今回のお話をヒントにさせて頂きたいと思います。もし、私法人に、労働者協同組合法を導入出来たとしたら、労働者協同組合というシステムに引っ張られて、「共に生きる・共に働く」という法人の特色も、より明確化されるのではと想像し期待しています。
・香西幸さん(明治大学大学院商学研究科)
:今回の研究会に参加して、「法制化」の意味を理解することができた。藤井さんのご報告からは、ワーカーズにとって法制化を求めることは実践の価値を問われる大変なことであること、田嶋さんのご報告からは、社会に必要とされることによって法制化が実現し、その法律が政策によって活用されていくことが分かった。法制化の過程で重視された「労働者性」とは相容れないワーカーズ・コレクティブの労働観について考えながら、今回成立した法律が実践や社会にどのような影響を与えていくのか、関心を持っていきたいと思う。
・一栁智子さん(名古屋大学大学院国際開発研究科)
:第108回社会的企業研究会では、ワーカーズ・コレクティブ ネットワークジャパンの藤井(恵里)さんと日本労働者協同組合連合会の田嶋さんから労働者協同組合法に関して、法案作成時の議論についてなど大変貴重なお話を伺いました。お二人のご報告から、出資-意見反映(経営)-従事(労働)を基本原理とする新たな法人形態は、就労困難にある人びとや、コロナ禍で大きな影響を受けた立場の弱い労働者にとって、今まさに求められているように思いました。一方で、報告後の質疑応答・討論の際に投げかけられたコミュニティにおける相互扶助的な活動(互酬性)と労働者協同組合法人の事業活動(事業性)との関連に関する質問と回答から、就労ではない、地域の多様な社会連帯活動と労働者協同組合法人の連携を含めた今後の協同労働のあり方について考えさせられました。また法人設立に対する中間支援組織の相談支援体制の整備や、NPO法人から労働者協同組合法人への組織変更の際に、無償ボランティアの方がたを労働者協同組合法人にどのように包摂していくのかなど、労働者協同組合法の施行に向けて検討されるべき課題についても理解を深めることができました。
【開催日時】 日時:2021年1月21日(木)18時~20時 場所:ZOOM会議(オンライン開催)
【登壇者】
■開催趣旨・司会進行
相良孝雄さん
(協同総合研究所事務局長/日本労協連理事/社会的企業研究会運営委員)
藤井恵理さん
(ワーカーズ・コレクティブ ネットワークジャパン 代表)
■「労働者協同組合法の意味とポイント」
田嶋康利さん
(日本労働者協同組合【ワーカーズコープ】連合会 専務理事)
■「今後、労働者協同組合法をどう活かすのか」
■質疑応答・討論
【当日の報告資料について】
最新版0121労働者協同組合法(社会的企業研究会)