日時:11月15日(水) 13時30分~18時
場所:明治大学研究棟4階第一会議室
テーマ:アメリカの事例から学ぶ働く場づくりとまちづくり ―労働者協同組合と労働組合の連携を探る―
講師:
レア・フリード (Leah Fried : 労働オーガナイザー) 「労働運動に運動を取り戻す-工場占拠から労働者協同組合づくりへ」
ジェーン・スロータ (レイバーノーツ初代編集長) 「レイバーノーツ紹介」
パネリスト:
高橋均 (元連合副事務局長)
藤木千草 ( ワーカーズ・コレクティブ及び非営利・ 協同支援センター)
田中夏子 (協同組合研究者・農)
モデレーター:
相良孝雄 (一般社団法人協同総合研究所 事務局長)
共催:明治大学労働教育メディア研究センター
感想・コメント(協同総合研究所 事務局長 相良孝雄)
「労働組合が労働者協同組合を設立する。」
2018年の通常国会で上程されることを目標に、「協同労働の協同組合」法制定に向けて取り組むなかで、労働組合によって新しいワーカーズコープが設立する事例はインパクトのある中身でした。
レイバーノーツの初代編集長のジェーン・スロータさんと労働オーガナイザーのレア・フリードさんがアメリカから来日し、報告をいただきました。その後、日本の取り組みとして、「ワーカーズコレクティブ(藤木千草氏)」、「日本の労働組合と労働者協同組合の連携の在り方(高橋均氏)」、「イタリアのワーカーズバイアウトの取り組み(田中夏子氏)」、「ワーカーズコープ(相良孝雄)」の報告があり、会場全体で活発な質疑応答がされました。
レイバーノーツとは、1979年に「労働運動に運動を取り戻す」
ことを目的に設立し、全米の草の根の労働運動活動家の横のネットワークをつくり、労働運動活動家育成のための参加型ワークショップ「トラブルメーカーズ・スクール」を各地で開催しています。ジェーン・スロータさんからは、「レイバーノーツは、組合民主主義を掲げ、労働者たちが協同組合を組織することは、暮らしを協同化する要求運動である。労働者協同組合をつくるのは、職場に目を向け、労働者が力をつけ、資本家と闘う自信をつけながら、労働者自身が社会に関与することである」とのことでした。
レア・フリードさんからは、「労働者協同組合と労働組合の連携の在り方」をテーマに報告していただきました。レアさん自身が、労働者が工場を占拠し、経営者と闘い、労働者協同組合をつくった経験を中心に話していただきました。「労働者協同組合を組織化するときに、労働組合員が集まり、企業を存続させるために労働者協同組合をつくるのかどうかなどを労働組合のオルガナイザーも入り議論を行います。オルガナイザーの役割として、その議論をする場をつくり、アドバイス、話し合いを促進し、協同組合の定款をつくりながら、労働条件等も皆で話し合い、労働者協同組合をつくっていきます。」とのことでした。
レアさんの話のなかで、労働運動のなかに、労働者協同組合の理念や思想を根付かせることはまだまだ難しいと感じていました。各州で労働者協同組合に関わる法律が定められていますが、アメリカのなかで労働者協同組合にもっと意識をむけていただくことが、オルガナイザーとしての活動する目的だとのことでした。
最後にレアさんから「労働組合、労働者協同組合を問わず、労働者が連帯の意識を持続することが必要だ。まずは労働者が連帯の精神を失わないようにするためにはどうしたらよいかを考えることが必要ではないか」との話がありました。
私は研究会の準備、当日は第2部モデレーターの役割で参加しました。その視点から考えたことを3点、記載したいと思います。
第1は、高橋均さんの報告でもありましたが、労働組合と労働者協同組合の連携は「地域課題の協同実践から始まる」と感じました。すでに「子ども食堂」「フードバンク」「生活困窮者」等の取り組みは多くの地域の団体と取り組みを進めています。そのなかで共に運動する経験を多様につくり、労働組合と労働者協同組合がお互いの存在を意識することが必要です。その運動があって初めて、事業として一緒に協同することができるのではないかと考えています。
第2は、「誰が労働者協同組合をつくるのか、(欲しているのか)」という点です。レア・フリードさんの報告、田中夏子さんのワーカーズバイアウトの取り組みでは、倒産した(する)企業の労働者が労働者協同組合をつくる視点でした。「協同労働の協同組合」法の施行後に、経営者の視点から労働者協同組合へと移行する例、NPOや社会福祉法人等で地域と生活に密着した福祉・教育・文化に携わる団体が労働者協同組合へ移行する例、少人数の市民が集まり、経済的・社会的・文化的に共通の目的をもって事業を立ち上げる労働者協同組合をつくる例等も今後、深めていきたいと思いました。
第3は、「労働者協同組合を設立する際の必要条件をさらに深めること」です。レアさんは労働者協同組合の課題として、「➀財源 ➁労働者協同組合の思想の持続性」を述べていましたが、日本の労働者協同組合の立ち上げモデルをテキストづくりを通じ、普遍化・共有化したいと感じました。
協同総合研究所では、1993年に『労働者協同組合と労働組合』という冊子を編集しています。そこでも労働組合と労働者協同組合の関係性について、7人の方それぞれの見解から執筆しています。それから25年が経ち、ワーカーズコープの実践が進むなかで、労働組合も労働者協同組合も地域づくり・仕事おこしを、労働者・市民が主体者として自治性を担保できる運動・事業体として、社会にとって価値ある存在であるかが問われていると感じています。その上で、「共に生き、共に働く、完全就労社会」を目指して、労働組合の方々とも多く交流しながら、共に社会的課題に挑戦できればと思います。