第98回社会的企業研究会

日時:2018年7月15日(日)14:30~17:00

場所:明治大学駿河台キャンパス研究棟2階第9会議室

報告テーマ&報告者

1)「日本における協同組合間連携の現状と今後の可能性」

前田健喜さん(JCA協同組合連携部長)

第98回_前田さん_写真2

2)「協同組合間協同で働き方・生き方を変える~”よいしごとステーション”の実践から~」

北川裕士さん(ワーカーズコープ東京中央事業本部事務局長)

第98回_北川さん_写真1

第一報告への感想・コメント(ワーカーズ・コレクティブ及び非営利・協同支援センター 藤木千草)

第二報告への感想・コメント(一般社団法人くらしサポート・ウィズ 志波早苗)

第一報告への感想・コメント

2018年4月1日に日本協同組合連携機構(以下JCA)が設立した。団体名が示す通り、日本の各種協同組合が参画しさまざまな社会的課題に取り組んでいくことが期待されている。これまで日本協同組合連絡協議会(以下JJC)や国際協同組合年記念協同組合全国協議会(以下IYC記念全国協議会)の事務局を担ってきた一般社団法人JC総研がJCAに組織改編し実務を担っているが、いずれの活動にも中心的にかかわっている前田健喜さんから設立までの経緯や今後の展望についてお話いただいた。

まず、「協同組合とは何か」を共有するため、国際協同組合同盟(以下ICA)の声明「協同組合のアイデンティティ」の定義・価値・原則の紹介があり、次に世界には電力・住宅・医療・葬祭・デザイナー・レストラン・通信サービス・スポーツチーム・学校など様々な分野で協同組合がモノやサービスを提供している事例の後に、日本の協同組合の現状が示された。日本では農業協同組合法1947年、消費生活協同組合法1948年、水産業協同組合法1948年、中小企業等協同組合法(事業協同組合・企業組合)1949年、信用金庫法1951年、労働金庫法1953年、森林組合法1978年と、戦後、分野別に法律がつくられ、それぞれ発展してきた経緯がある。

個別に活動しがちな各種協同組合の全国的な連携組織としては、ICAに加盟する全国組織が会員となり1956年にJJCが発足した。主な活動は協同組合間の提携、共通する問題の解決、海外の協同組合との連携である。最近では、政府の農協改革に対する抗議声明の発表(2014年・2016年)、SDGs達成に協同組合の役割を明記すべきと外務大臣に要請(2015年)、ICAと連携した活動(2015年)などを行った。協同組合の連携組織ならではの活動が活性化したことで、JJCが新たな組織JCAへ移行し、発展的に解散することとなった。

JCA設立を後押ししたのは、もうひとつの全国的な連携組織、IYC記念全国協議会の活動である。この団体の前身は2010年8月に設立した「2012国際協同組合年全国実行委員会」(以下IYC全国実行委員会)で、2013年3月まで、さまざまな協同組合が協力し合って各種イベントを企画し実施した。参加はJJCの14団体を上回る21団体が幹事となり、連携の幅が広がった。また、全国レベルだけでなく各都道府県に実行委員会が結成され多様な取組が行われたことも、各地域での協同組合連携の拡充につながっている。

IYC全国実行委員会の主な取り組みは、協同組合憲章草案を作り政府に働きかけたこと、大学での講座開設促進、協同組合法の比較研究や各種学習会などがある。その活動を通して、協同組合の認知度をあげ発展させることや協同組合政策の実現、東日本大震災からの復興など継続して連携する必要性が共有され、IYC記念全国協議会が2013年5月に設立した。

ワーカーズ・コレクティブの全国組織であるワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(以下WNJ)も、IYC全国実行委員会に参加することで活動の幅が広がったと実感する。私個人としても、協同組合憲章草案策定や協同組合法の比較研究などに参加し、視野を広げ知己も得ることができた。他の協同組合と出会い、目的意識をもって話し合う全国組織ができたことは、IYCの大きな成果であり、その活動がJCA設立に寄与したことは感慨深い。

JCAは「持続可能な地域のよりよいくらし・仕事づくりへの貢献」を目的として、①協同組合間連携等(推進・支援)②政策提言・広報(発信)③教育・研究(把握・共有・普及)を行っていくとのことで、今後の活動に期待が集まっている。研究会の参加者からは「協同組合のナショナルセンターとなってもらいたい」という声もあがっていた。4月に設立したばかりであり、前田さんとしては「緒に就いたところ」とのことだった。

さて、協同組合のけん引役であるJCAに3つの提言をさせていただきたい。

一つは、参加型の組織運営である。JCAの総会で議決権があるのは1号会員(年会費が数十万~数千万円)で、現在は下記の18団体である。2号会員(年会費数十万円)はJAの都道府県中央会と一般社団法人日本共済協会で48団体、3号会員(年会費2万円以上)は、単体のJA・生協・漁協・森林組合や連合会など数十団体となっている。WNJが会員になるとしたら、会費負担が可能な3号会員だろう。より多くの各地域の組合員が参画するためには、3号会員の意向が反映させる仕組みを期待したい。

全国農業協同組合中央会・日本生活協同組合連合会・全国漁業協同組合連合会・全国森林組合連合会・日本労働者協同組合(ワーカーズ・コープ)連合会・全国労働者共済生活協同組合連合会・一般社団法人全国労働金庫協会・全国農業協同組合連合会・全国共済農業協同組合連合会・森林中央金庫・一般社団法人家の光協会・株式会社日本農業新聞・全国厚生農業協同組合連合会・株式会社農協観光・一般社団法人全国森林漁業団体共済会・全国大学生活協同組合連合会・日本医療福祉生活協同組合連合会・日本コープ共済生活協同組合連合会

二つ目は女性役員を増やすこと。上記の各団体から選出される理事など現在の役員全員が男性である。次回の改選期には女性の理事が増えることを強く期待する。

三つめは、協同組合以外の一般への啓発・周知活動である。JCAの活動計画では、協同組合どうしの連携や組合員への調査・研究・教育がメインとなっている。それはもちろん重要だが、協同組合のまだまだ低い認知度をどう上げていくか。広報は「ウェブサイトによる情報発信」となっているが、他の手法も検討いただきたい。また、国際協同組合デーの記念中央集会などへの参加呼びかけは会員組織の組合員だけではなく、組合員以外の一般市民や学生などにもおこなってはどうか。会場の半数は協同組合を始めて知る人たちで、集会を機に関心をもち、身近な協同組合の組合員になる・・・という動きがつくれるとおもしろいだろう。

第二報告への感想・コメント

北川さんから地域共生型就労拠点「こみっとプレイス」構想を伺ったのは、一昨年だと思う。その基盤としてあるのが「協同組合バンク運営協議会」である。協同組合バンク運営協議会は現在、ワーカーズコープ東京中央事業本部の下、生協パルシステム東京、パルシステム生協連合会、高齢者生協、協同総合研究所、発達障がいのピアサポート団体、くらしサポート・ウィズ・オブザーバーとして中央労働金庫で緩やかに構成している。協同組合で働きたいと思う人への求人・求職サイト「よいしごとステーション」を運営しているほか、仕事おこし講座や自分さがし講座からの人材育成、イベントやボランティア募集などの場の提供も行い、協同組合間で連携して人材を発掘、育成、必要な場合は伴走型相談対応もする。「人としごととくらし」を切り離さず、一方通行ではない共生型のあり方をめざし、ゆくゆくは地域活性化も視野にいれて、社会的企業や地元に地盤を置く事業体にも活動を広げていく予定である。

核は「人としごととくらし」と表現したように、さまざまな人が生きていける空間を創ること。人が生きていくための生業としてあった働くという行為が、いつの間にか「仕事」が中心になって、その仕事に生きている人間をあてはめるようになった結果、役立つか役立たないかによってランク付けされ、排除の対象になったりするという逆転現象が起きている。本来は一度しかない人生を全うするためにしごとはある。その人なりの働き方を取り戻し、誰でも社会の一員として生きていけるようにする、そういう選択権は人の方にあるべきではないかということである。

儲けを最大化するため、生産性向上を命題に効率化を腐心する現代社会の中にあって、「人とくらし」に焦点を当て、働くことの根源を問い直したこの構想は、協同組合人にとって当たり前と言えば当たり前ながら、本気でそこに舵を切ろうとするには相当の覚悟と勇気が伴う。協同や社会的包摂を考える人は誰でも「構想は良いね」と言うが、「うまくいくかどうかわからない夢のような話、資金捻出はどうするの?」「どこからやるの?」「何から創るの?」「絵空事なら誰でもできる、実現可能性はどの程度あるの?」とたくさんの疑問符がつく。しかし日々相談業務に携わる中で、生きている人の存在が一番蔑ろにされ、そのために諸々の社会問題が噴出していることを実感する。このまま進めば不安定な社会になり、結果として誰も幸せにならないと思えてならない。一般に、若者は社会へ巣立つ時点で生産人口として役立つか役立たないかで選別される。選別基準は成育歴や学歴が大きな比重を占める。熟年者は生産年齢から外れたとたんに役立たずになる。ITの発展などで一昔前の長老の知恵は求められていない。不登校から始まる社会的自立の困難な若者は、今やひきこもりの8050問題につながり、やがて高齢者の孤独死にまで結びつく。

いつの間にか社会の構成要素の第一義である「人」が脇役となってしまい、誰もが安心して安全にくらせる空間を失ってしまっているのではないか。北川さんが記した文章の中で、自分を育てたのは「コミュニティペアレント」だと表現している。弱々しいホモ・サピエンスがなぜ今の繁栄を勝ち得たか。それは群れで助け合ったからとか、獲物を群れまで運び分配したからだと言われている。技術の発展で豊かになり、さまざまなことをお金に代行できる、させるようになり、人にとって一番大事な助け合うだとか分け合うだとか、そのための仲間づくりをどこかへ置いてきてしまったようにも思う。

この取り組みはそうしたことを身の内に取り戻す仕掛けでもあると考えている。くらしに最も近い協同組合がまず取り組み、小さな成功モデルを重ねる中で、理解してくれる事業体へ周辺へ広げていくイメージである。

詳細は、北川浩士(2018)「都内での協同組合間協同『働き方・生き方改革』から『地域の改革』へ」協同総合研究所『發見』6月号(pp.18-24)をお読みください。

蛇足だが、憲法をどう考えるのか問われている現在、この取り組みは「憲法における生存権の保障、基本的人権の尊重、平和主義」などの理念に通じるものと確信している。

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